私は自他共に認める方向感覚ゼロ女である。

どれくらい方向感覚がないかというと水谷豊レベルである。
(わかりにくい)
ネコでいうとひげを切られた状態である。
ナメクジでいうと触覚を持たずに生まれたようなもんである。

だから引っ越す時の第一条件は
「駅から曲がるのは2回まで」(今住んでいるところは一度も曲がらない)。
だから、初めてのところに行く場合は
(3回目くらいまでは確実に迷うが)
下調べに地図と方位磁石は欠かせない。

今までも幾度となく迷子になっている。
夜の中央大通りを東にただまっすぐ自転車で走っていただけなのに
気づいたら長堀通りに出ていたこともある。
交差するはずもない道が時空を超えて交差しちゃうのね。
未だに「夜の道は勝手にカシャンカシャンってなる」
と信じている。気をつけろ!夜の大阪市内!である。

そんな私が先日何を過信したのか
地図も持たず2箇所の目的地へ向かった。
両方行ったことがある場所なので大丈夫、だいじょうぶ。

しかし、やっぱり点が線でつながらず、また迷子。
「大人やし、人に聞けばなんとかなるか」
と歩き続けた。
しか~し、人がいない!
「大人やし、タクシーとめちゃう」と言ったところで車なんか通らない。
むやみに歩き続けたおかげで、感も働かず
どっち向きに歩けばいいのか全くわからなくなった。
身動きがとれない。

「遭難やん」そうつぶやくも、頼れるものはない。
電話で誰かに聞くにも今どこかすらわからない。
何が見えるかと聞かれれば
見ず知らずの「大西さん家」としか言いようがない。

「寝たら死ぬよ、しっかり!私」と頬をうちつつ
ただひたすら歩き続けた。
何度も行き止りにぶつかりながら2時間も。

仕事先に遭難の旨の連絡を入れると、
「午前中に着かなかったらのろし上げておきます」と
好青年に優しいお言葉をもらう。

やっと見覚えのある道に出た。そこは自宅の前。
なんだか狐につままれたよう。
「途中、おいなりさんあったもんな、ほんまにつままれたんやわ」と
微妙に自分の方向音痴を棚にあげてみた。
恥ずかしながら私は10年も住んでいる自宅の近所で迷っていたのである。

改めて2箇所目の目的地へ向かう。
そして、仕事先の好青年がのろしをあげる準備で
火をおこし始めてくれていたところ、無事帰還。

好青年の彼が言うには「方向音痴の人って、今何が見えますかって聞いたらヘンなもん言いますよね。」らしい。
以前事務所くる予定の人が道に迷って、何見えますかって聞いたら『オロナミンCの看板』って言われたそうである。
それは大村崑ですか?としか聞きようがないわな。

しかしその迷った人の気持ちが痛いほどわかる。
なんかね、どうでもええもんばかり目に入るのよ。
大きなランドマークが目に入らないのよ。
つまり、そんなどうでもいいものばっかり目に映して歩いてるから
道に迷うのね。

物事を大きくとらえられず、小さいところばっかりこだわってる
私そのままってことか。