先週、1本飛ばしちゃったわね、私。
失礼、しつれい。

では、今週の1本!

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一度は「言われてみたい!」「言ってみたい!」そんなこっぱずかしい言葉を
集めた妄想くん、妄想さんのサイトが人気らしい。

「オレのことは構わず逃げてくれ、こいつのことだけは守ったってくれ」
彼は、そう言って傷ついた腹部を抱えたまま地面へと倒れた。

現実の世界で、こんなハードボイルドチックな場面に遭遇するなんて
闇の世界の人しかあり得ないと思っていた小市民な私が
出くわしてしまったのです、言われてしまったのです、現実に。

一体どんな闇組織に追われてんねん!な発言であるが

追っていたのは、鬼である。
かわいらしい小学生の鬼である。
鬼ごっこをしていたのだから鬼に追われて当然である。

最年少で鬼ごっこに参加していた4才の私はいわゆる「ごまめ」。
そのお兄ちゃんが私の手をひいて逃げていたのだが
何を思ったか、突然駐車中の車に自らぶつかり、
苦し紛れにしぼりだすように発せられたセリフである。

「いやいや、鬼は隣のみちよちゃんやし、何もそこまでして逃げんでえーし。
まして、わたし鬼につかまっても鬼にならへん“ごまめ”やし」
そんなことを心で思いながら立ちつくしていた。

周りにいた子供たちも
「何ゆうとんねん、自分からぶつかったくせに…」と
半ばあきれていたが、それを口にする者は誰ひとりいなかった。
「大丈夫~」と心配している心優しい子供たち。

誰もが、ライブで聞くことがないと思っていた
奈良の田舎にはあまりにも似つかわしくないそのセリフは
家族団らんでテレビを見ていて濡れ場にさしかかった時の
気まずさ、気恥ずかしさのようなものがあり、
彼を心配することで、なかったことにしようとしたのである。

しかし、そこでひとり動いた者がいた。
鬼のみちよちゃんである。
彼女は、ごまめの私でなく
彼の肩をたたき「タッチ!」と笑顔で言ったのである。

傷だらけの鬼、誕生シーンであった。