中津でヤドカリ(間借り)している事務所では
パーティションのコチラ側(裏舞台)で身を隠しひっそりと仕事をしている。

最終話を迎えた家政婦とちがって
「聞いてやる!」という意志を持ってではないが
パーティションのアチラ側(表舞台)の話が聞こえてくるのである。
あくまでも受動的に、である。

ことによると、この話の一部始終を知ってるのは私だけかも
と思うこともあり、話が噛み合ってなかったりすると
関係ないのに口を挟みたくなってそれを我慢するのに苦労したりする。

そうやって、知らない間に、
「全く自分には関係ない話」に“勝手に参加”が癖に
なってしまったようだ。

先日、南森町の駅で
階段を降りたホームの谷町線に乗ろうか、
そのまま堺筋線に乗ろうか
携帯の乗り換え案内で調べていたところ

私の前に20歳過ぎくらいのほろ酔いの女の子2人が
立ち止まり、話を始めた。

「○○さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫、だいじょうぶ。こう見えても意外と大丈夫なんだってばぁ」
「ほんまですかぁ、足下ふらついてますよぉ」
「きゃははは」仕事先の同年代の先輩と後輩なのだろう。
若いと酔っぱらっていても美しい。

そして後輩が「ちゃんと梅田で降りてくださいよ」と
先輩を見送って別れたのである。

が、私はそこで気づいてしまった。
その先輩が降りたホームが天王寺行きのホームだということを。

私は、とっさの判断でその後輩を追いかけ
「あっち、梅田行きじゃないですよ」と伝えた。

この時点でわたしはなんだか
会話に参加していた気分になってしまっていたのだ。

その後輩のリアクションが最高だった。
「うわっ、ほんまや!」と表情豊かに発するや否や
すでに足は先輩が降りた階段を追っていた。
不振がることも、お礼もなしに。
なんて素直なんだ!

後で冷静になった彼女たちの会話はこんな感じだろうか。
「あのひと誰やってんやろ?」
「なんで、梅田で降りるって知ってはってんやろ?」
「ストーカーかもー。こわ~!!」
「きゃははは」ってところだろう。

たまたま横に立ってた通りすがりの者です。

今日の一善ということにして
「ええことしたなぁ」と完全自己満足で帰りました。
ストーカー扱いかもしれんけど。